乳児型脊髄性筋萎縮症治療薬「スピンラザ」(製造販売元:バイオジェン・ジャパン)が厚生労働省より薬事承認を取得し、8月30日から販売開始となった。脊髄性筋萎縮症(SMA)については当サイトでも取り上げたことがあるが、治療薬の開発が成功し、ついに販売開始となった。今回は乳児型SMAが適応症となっているが、遅発型SMAについても使用可能となる見通しだ。
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「スピンラザ」は、脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する初めての治療薬。これまでは治療薬はおろか、人工呼吸器やチューブ栄養などの「ケア」をする以外方法がなかったのだ。SMAは、生後6カ月以内に発症した場合、人工呼吸器を付けないと死亡率が95%に至る深刻な病気だ。そのような命にかかわる病気に対する初めての治療薬ということと、国内初のアンチセンス核酸医薬品という新しいタイプの医薬品ということで、通常は1年ほどかかる厚生労働省の審査期間が、7カ月ほどで終わったスピード承認薬が「スピンラザ」なのだ。
もう一つ高い注目を集めたのが、薬の価格(薬価)だ。1瓶932万424円という高額な値段が付いたのだ。報道によると、使用料の多い最初の1年は5592万円の薬代がかかるとのこと。ただし、乳児型SMAは国が指定している難病(小児慢性特定疾病)なので、認定を受けていれば、医療費の大半は助成金によって支払われる。一般所得者であればひと月の上限額は5000円程度だ。もちろん、遅発型SMAも指定難病となっている。
SMAは、筋肉の細胞が萎縮(筋力低下)する病気で、生後6カ月以内に発症した赤ちゃんの場合、お座りをすることができず、呼吸もできなくなるため、気管切開して人工呼吸器を付けなければならない。なかなか首が座らないことで病院に相談し、初めてSMAがわかるケースもあるという。SMAによる筋肉細胞委縮は、SMNというタンパク質の生産が少ないために起こることがわかっていて、「スピンラザ」はSMNタンパク質の産生量を増加させる薬だ。臨床試験では、「スピンラザ」投与により、首が座るようになった赤ちゃんが22%になったほか、寝返りができるようになった赤ちゃんは34%、お座りができうようになった子が8%、そして立つことができるようになった子も1%いたと報告している。これまで有効な治療法がなかった脊髄性筋萎縮症の赤ちゃん、そして子どもたちにとって、「スピンラザ」が使用できるようになったのは、大きな希望となっている。
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